院長コラム
2025年10月15日
〜「腸活」をする前に知っておきたい本当の話〜
私たちの腸の中には、100兆個以上・1000種類以上の細菌がすんでいます。
これらの細菌たちはまるで「お花畑(フローラ)」のように
複雑な群れをつくって共存しており、それが「腸内細菌フローラ」と呼ばれるものです。
最近では「腸内フローラ」や「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」
とも言います。
この腸内細菌たちは、単なる“お客さん”ではありません。
私たちの健康に深く関わっていて、次のような役割を担っています:
✅ 食べ物の消化・吸収のサポート
✅ 免疫システムの調整(アレルギーや自己免疫疾患にも関与)
✅ ビタミンや短鎖脂肪酸(腸のエネルギー源)などの産生
✅ 精神・神経系への影響(「腸脳相関」)
つまり腸内フローラは、「健康・免疫・心の安定」まですべてに関わる“体の土台”なのです。
腸内細菌は「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」に分けられます。
バランスが取れている時は問題ありませんが、ストレス・不規則な生活・抗生物質・偏った食事などでバランスが崩れると、
下痢・便秘
肌荒れ
免疫低下(風邪をひきやすい)
アレルギー・自己免疫疾患の悪化
精神面の不調(うつ・不安など)
といった不調につながることが、多数の研究で報告されています(※1)。
腸活というと「ヨーグルトを食べる」と思いがちですが、
実はそれだけではほとんど意味がありません。
なぜなら、市販のヨーグルトに含まれる乳酸菌の多くは腸まで届かず胃酸で死滅し、たとえ届いても腸内で定着しにくいことがわかっているからです(※2)。
では、何が大切かというと「今いる腸内細菌を育てること」です。
そのために必要なのが、「プレバイオティクス(菌のエサ)」です。
代表的なものは:
食物繊維(ごぼう・大豆・海藻・野菜など)
レジスタントスターチ(冷やごはん・未熟バナナなど)
オリゴ糖(玉ねぎ・にんにく・大豆など)
こうした“菌のごはん”を摂ることで、
自分の腸内細菌フローラが元気になり、多様性が高まるのです。
最新の腸内研究では、「菌の数よりも多様性(種類の豊かさ)」が健康に直結することがわかっています(※3)。
多様な菌が共存している人ほど、肥満・糖尿病・アレルギー・精神疾患のリスクが低いというデータもあります。
腸活は特別なサプリや乳酸菌飲料ではなく、日常の食事と生活習慣が基本です。
✅ ポイントは次の3つ:
毎日の食物繊維とオリゴ糖で「菌のえさ」を与える
発酵食品(味噌・納豆・ぬか漬けなど)で“生きた菌”も補う
睡眠・運動・ストレスケアで腸の環境をととのえる
腸は「今日食べたもので、未来の自分をつくる場所」。
腸内フローラと仲良く暮らすことが、健康と長寿への最短ルートです。
当クリニックでは自分の腸の餌となるサプリメントもご紹介しています。
ご相談下さい。
Lozupone CA, et al. “Diversity, stability and resilience of the human gut microbiota.” Nature 2012;489(7415):220-230.
Derrien M, et al. “Does the gut microbiota contribute to the efficacy of probiotics?” Trends Microbiol. 2015;23(10):614–621.
Le Chatelier E, et al. “Richness of human gut microbiome correlates with metabolic markers.” Nature 2013;500(7464):541–546.
💡 一言で言えば:「ヨーグルト頼みでは腸活はできません。“菌を入れる”より“菌を育てる”」が鉄則です。
HIYOSHINOMORI INTERNAL MEDICINE CLINIC